変形性股関節症
リボーンクリニック 大阪院の変形性股関節症
大腿骨頭壊死の症状と原因|見逃されやすい初期症状と対処法
- 大腿骨頭壊死の症状と原因|見逃されやすい初期症状と対処法
- 大腿骨頭壊死とはどんな病気か
- 大腿骨頭壊死の検査・治療と対処法
- 大腿骨頭壊死と再生医療の位置づけ
- よくある質問Q&A|大腿骨頭壊死
- Q1. 大腿骨頭壊死とはどんな病気ですか?
- Q2. 大腿骨頭壊死の初期症状にはどんな特徴がありますか?
- Q3. 股関節以外(膝・太もも・お尻)が痛むことはありますか?
- Q4. レントゲンで異常がなければ大腿骨頭壊死ではありませんか?
- Q5. 大腿骨頭壊死はどのくらいのスピードで進行しますか?
- Q6. 大腿骨頭壊死は両側に起こることもありますか?
- Q7. 大腿骨頭壊死になったら必ず手術が必要ですか?
- Q8. 保存的治療だけで進行を止めることはできますか?
- Q9. 大腿骨頭壊死と再生医療(幹細胞治療)はどの段階で検討されますか?
- Q10. 日常生活でやってはいけないことはありますか?
- Q11. 大腿骨頭壊死は完治する病気ですか?
- Q12. どの診療科を受診すればよいですか?
大腿骨頭壊死の症状と原因|見逃されやすい初期症状と対処法
股関節の痛みや違和感が続くと、「年齢のせいだろう」「少し休めば良くなるはず」と考えてしまう方は少なくありません。
しかし、こうした症状の背景に大腿骨頭壊死が隠れているケースもあります。この病気は、骨への血流障害をきっかけに静かに進行し、初期にははっきりとした自覚症状が出にくい点が特徴です。
一方で、痛みを感じたときには、すでに骨の強度が低下していることもあり、放置すると歩行や日常生活に影響が及ぶ可能性があります。だからこそ、原因や症状、進行段階、検査方法、治療の選択肢を正しく理解することが大切になります。
この記事では、大腿骨頭壊死とはどのような病気なのかを基礎から整理し、血流障害との関係、症状の現れ方、MRI検査による早期発見の重要性、保存的治療や手術、再生医療の位置づけまでを分かりやすく解説します。
現在の状態を見極め、これからどのような対応が考えられるのかを知ることで、納得のいく判断につなげていただけるはずです。
気になる症状がある方も、情報を整理したい方も、まずは全体像を把握するところから読み進めてみてください。
この記事で分かること
- ☑ 大腿骨頭壊死とは何かと血流障害との関係
- ☑ 初期症状から進行段階までの特徴と見分け方
- ☑ MRI検査を中心とした診断方法と早期発見の考え方
- ☑ 保存療法・手術・再生医療を含む治療選択の全体像

大腿骨頭壊死とはどんな病気か
大腿骨頭壊死とは、股関節を構成する大腿骨頭への血流が低下または途絶えることで、骨の組織が死んでしまう病気です。結果として骨の強度が保てなくなり、体重がかかることで骨頭が潰れ、強い痛みや歩行障害につながります。
この病気の特徴は、発症してもすぐに症状が出ないことが多い点にあります。気づかないまま進行し、痛みを感じたときにはすでに骨が変形しているケースも少なくありません。
なぜ見逃されやすいのかというと、初期段階ではレントゲン検査で異常が映らないことがあるためです。一方で、病気自体は進行性であり、自然に元の骨の状態へ戻ることは難しいとされています。
こうした性質から、大腿骨頭壊死は「早く知り、正しく理解すること」が大切な病気だと言えます。
なお、日本では原因がはっきりしない特発性大腿骨頭壊死症が国の指定難病とされており、疫学や診断基準は公的に整理されています(出典:難病情報センター「指定難病 特発性大腿骨頭壊死症」)
POINT -
- ● 大腿骨頭壊死は血流障害によって骨が弱くなる病気
- ● 初期は無症状のことが多く、気づきにくい
- ● 進行すると骨が潰れ、痛みや歩行障害が起こる
- ● 日本では指定難病に分類されている
大腿骨頭壊死とは
大腿骨頭壊死とは、股関節を構成する大腿骨頭への血流が低下することで、骨組織が壊死に至る疾患です。大腿骨頭は股関節の中で体重を支える重要な部位であり、歩く・立つといった日常動作のたびに大きな負荷がかかります。壊死した骨は強度を保てなくなり、体重がかかることで徐々に変形や陥没が生じる場合があります。
この病気が問題になるのは、壊死そのものよりも、その後に起こる骨の変形です。壊死した骨は修復力が低下し、荷重に耐えきれず押しつぶされるように変形します。すると、関節の噛み合わせが崩れ、痛みが強くなります。
発症してすぐに強い症状が出るとは限らず、また壊死の範囲が小さく、体重がかかりにくい場所に限局している場合は、長期間症状が出ないこともあり、比較的若年〜壮年期に見つかることも多い点が特徴です。
このように、大腿骨頭壊死は「壊死があるかどうか」だけでなく、「どこに、どの程度起きているか」が、その後の経過を左右します。単に病名を知るだけでなく、病態を立体的に理解することが大切です。
POINT -
- ● 大腿骨頭は体重を支える重要な部位
- ● 壊死そのものより骨の変形が症状の原因
- ● 壊死の位置と範囲で経過は大きく変わる
- ● 症状が出ないまま経過するケースもある
骨が「壊死」するとはどういうことか
骨は一見変化しない組織に見えますが、実際には血流によって栄養と酸素が供給され、常に代謝が行われています。骨が壊死するとは、骨の中にある細胞が何らかの理由で血液から酸素や栄養を受け取れなくなり、生命活動を維持できなくなることです。
実際、骨は硬い組織に見えますが、内部では常に新しい骨が作られ、古い骨が壊される新陳代謝が行われています。この循環を支えているのが血流です。血流が途絶えると骨細胞は生存できなくなり徐々に機能を失います。これが壊死です。壊死自体は痛みを伴わないこともありますが、構造的な弱化が進むことで症状が表面化すると考えられています。
ここで注意したいのは、壊死した直後に強い痛みが出るわけではない点です。壊死が起きても骨の形が保たれている間は、違和感すら感じない場合もあります。
しかし、壊死した部分は力学的に弱くなっているため、日常生活で体重がかかり続けると、骨が耐えきれず変形や陥没を起こします。
つまり、痛みは壊死の結果として遅れて現れるサインだと考えると理解しやすいでしょう。
POINT -
- ● 骨も血流によって生きている組織
- ● 血流が途絶えると骨細胞が死滅する
- ● 壊死直後は痛みが出ないことが多い
- ● 痛みは骨の変形が進んだ結果として現れる
血流障害が根本的な問題
大腿骨頭は血管の分布が限られており、もともと虚血に弱い部位です。
大腿骨頭壊死の本質は、骨そのものの老化ではなく血流障害にあります。結論として、大腿骨頭へ十分な血液が届かなくなることが、壊死の出発点です。
骨は硬い組織に見えても、内部では血管を通じて酸素や栄養を受け取り、新陳代謝を続けているからです。
ここで注目したいのが大腿骨頭の解剖学的な特徴です。大腿骨頭は、供給血管の数が限られており、血流が低下すると代替経路が作られにくい部位です。すると、血管が細くなったり詰まったりした影響が、そのまま骨組織に及びます。
例えば、ステロイド使用や多量飲酒があると、血液が固まりやすくなったり脂肪が血管内に増えたりして、骨頭内の微小血管の流れが妨げられると考えられています。
このように考えると、大腿骨頭壊死は「骨の病気」というより、「血流のトラブルが骨に現れた状態」と理解すると、全体像がつかみやすくなります。
このように外傷や薬剤、生活習慣などが関与することで、骨頭内部の微細な血流障害が生じると考えられていますが、詳細な発症機序については現在も研究が続けられています。
POINT -
- ● 大腿骨頭壊死の出発点は血流障害
- ● 骨は血液により代謝を保っている
- ● 大腿骨頭は血流低下に弱い構造
- ● 血管の異常が骨の壊死につながる
進行性の病気としての特徴
大腿骨頭壊死は、時間とともに状態が変化する進行性の病気です。結論として、一度発症すると自然に元の状態へ回復することは難しい放置するととされています。骨頭の変形が進み、元の状態に戻ることは期待できません。
その理由は、壊死した骨が自然に再生する力を持たず、体重がかかることで少しずつ押しつぶされていくためです。ただし、すべての症例で急速に進行するわけではなく、壊死の範囲や荷重部との位置関係によって経過は大きく異なります。
この病気の厄介な点は、壊死が起きてもすぐには症状が出ないことです。初期には無症状、あるいは一時的な痛みだけで済む場合もあります。ところが、骨の強度が低下した状態が続くと、あるタイミングで骨頭が陥没し、そこから痛みや可動域制限が一気に進行します。つまり、症状の出現は病気の「途中経過」であり、スタートではありません。
進行の程度は人によって異なりますが、壊死の範囲や位置、体重のかかり方によって将来の見通しが左右されます。このため、早い段階で進行性の病気であることを理解し、経過観察や治療方針を検討する姿勢が大切になります。
POINT -
- ● 大腿骨頭壊死は自然治癒しにくい
- ● 初期は無症状でも進行する
- ● 痛みは骨の陥没後に強くなる
- ● 進行度は壊死範囲や部位で変わる
大腿骨頭壊死の原因
大腿骨頭壊死の原因は一つではなく、複数の要因が関与します。結論として、血流を妨げる要素が重なることで発症リスクが高まると考えられています。
その背景には、血液の性質や血管の状態が骨頭内の循環に強く影響する点があります。
主な原因・危険因子を整理すると、以下のようになります。
| 原因・要因 | 関連の考え方 |
|---|---|
| ステロイド薬の使用 | 血液凝固や脂質代謝の変化により血流低下 |
| アルコール多飲 | 脂肪代謝異常による血管障害 |
| 外傷(骨折・脱臼) | 血管そのものの損傷 |
| 血液・自己免疫疾患 | 血管炎や凝固異常の影響 |
| 原因不明(特発性) | 明確な要因が特定できないケース |
ただし、これらの要因があっても必ず発症するわけではありません。一方で、明らかな原因が見当たらない「特発性」と呼ばれるケースが多いことも特徴です。
このように、大腿骨頭壊死は生活習慣や治療歴、体質などが複雑に絡み合って起こる病気であり、原因を一つに決めつけない視点が求められます。
POINT -
- ● 原因は血流を妨げる要因の重なり
- ● ステロイドや飲酒は代表的な危険因子
- ● 外傷による血管損傷でも起こる
- ● 原因不明の特発性が多い病気
大腿骨頭壊死の症状
大腿骨頭壊死の症状は、結論として初期には気づきにくく、進行すると生活に大きな支障をきたす点が特徴です。
なぜなら、骨が壊死した段階では痛みが出にくく、骨が潰れ始めてから症状が表面化するためです。
実際、初期には「歩き始めに股関節が少し痛む」「違和感があるが休むと治る」といった軽い症状にとどまることがあります。このため、筋肉痛や一時的な疲労と誤解されやすい傾向があります。
しかし、壊死した骨が体重を支えきれなくなると、痛みは次第に強くなり、安静時や夜間にも続くようになります。
また、股関節だけでなく、お尻や太もも、膝に痛みを感じるケースも少なくありません。その結果、腰や膝の病気と誤認され、診断までに時間がかかることもあります。
症状が進行すると、股関節の動きが悪くなり、靴下を履く、あぐらをかくといった日常動作が難しくなっていきます。
POINT -
- ● 初期は痛みが軽く見逃されやすい
- ● 痛みは骨の陥没とともに強くなる
- ● 股関節以外に痛みを感じることもある
- ● 進行すると日常動作が制限される
病気の進行段階
大腿骨頭壊死は、結論として段階的に進行する病気です。
このため、現在どの段階にあるかを把握することが、治療方針を考える上で欠かせません。
進行度は画像検査をもとに評価され、骨頭の形態が保たれている段階から、圧潰・関節症性変化へと段階的に進みます。
進行段階を把握することは、治療方針を検討するうえで重要です。
進行は大きく分けて、壊死が生じた段階、骨の形が保たれている段階、そして骨が潰れて関節が変形する段階へと移行します。初期段階では、レントゲン検査で異常が確認できないこともありますが、内部ではすでに壊死が始まっています。
その後、修復反応が起こるものの、体重負荷に耐えられなくなると骨頭が陥没します。
理解を助けるため、一般的な進行イメージを整理します。
| 進行段階 | 骨の状態 | 自覚症状の傾向 |
|---|---|---|
| 初期 | 壊死はあるが形は保たれる | 無症状または軽い痛み |
| 中期 | 骨頭の強度が低下 | 動作時の痛みが出る |
| 後期 | 骨頭が潰れ関節変形 | 持続的な強い痛み |
このように、症状の強さと骨の変形は必ずしも同時に進むわけではありません。だからこそ、痛みの有無だけで判断せず、画像検査による評価が大切になります。
POINT -
- ● 大腿骨頭壊死は段階的に進行する
- ● 初期は画像でしか分からないことがある
- ● 骨の陥没が症状悪化の分岐点
- ● 病期の把握が治療判断につながる
壊死の範囲と場所が予後を左右する
大腿骨頭壊死では、結論として壊死の範囲と起きた場所が将来の経過を大きく左右します。
同じ病名であっても、全く異なる経過をたどる理由はここにあります。
大腿骨頭の中でも、体重が最もかかる部分に広範囲の壊死がある場合、骨頭の圧潰リスクは高くなる傾向があるため、骨は潰れやすく、進行のスピードも速くなります。一方で、壊死が狭く、荷重がかかりにくい位置に限局している場合は、長期間にわたり大きな症状が出ないこともあります。
つまり、「どれくらい壊死しているか」だけでなく、「どこに壊死があるか」が重要です。臨床では、壊死の範囲や位置をもとに分類が行われ、将来的に骨が潰れる可能性や治療選択の目安が判断されます。この評価にはレントゲンよりもMRI検査による詳細な画像で診断されることになります。
こう考えると、大腿骨頭壊死の予後は一律ではなく、個々の状態によって大きく異なる病気だと理解できます。
POINT -
- ● 壊死の範囲が広いほど進行しやすい
- ● 荷重部の壊死は予後に影響しやすい
- ● 症状の強さだけでは判断できない
- ● MRI評価が将来予測の手がかり
なぜ大腿骨頭壊死症が起こるのか?主な原因と危険因子
大腿骨頭壊死症が起こる背景には、骨頭内の血流が滞る要因が重なっているといわれていています。何度も申しますが、血液の流れが乱れると、骨細胞へ酸素や栄養が届かなくなり、壊死が進行しやすくなるからです。
また、原因が特定できない「特発性」が多い一方で、ステロイド薬の全身投与、アルコール多飲、外傷などが危険因子として知られています。
これらは血流や脂質代謝に影響を及ぼす可能性があり、血液の流れを阻害すると考えられています。
主に知られている原因・危険因子は次の通りです。
これら、いずれか一つでもあれば必ず発症するというわけではなく、体質や生活背景が複合的に関与します。
| 原因・危険因子 | 影響の考え方 |
|---|---|
| ステロイド薬の使用 | 血液凝固や脂質代謝の変化で微小血管が詰まりやすい |
| アルコール多飲 | 脂肪代謝異常により血管内環境が悪化 |
| 外傷(骨折・脱臼) | 骨頭へ向かう血管そのものの損傷 |
| 血液・自己免疫疾患 | 血管炎や凝固異常が循環を妨げる |
| 原因不明(特発性) | 明確な誘因が特定できないケース |
ただし、原因が特定できない特発性が多い点も、この病気の特徴です。
このため、危険因子が思い当たらなくても、症状や画像所見から総合的に判断する姿勢が大切となります。
POINT -
- ● 血流を妨げる要因の重なりが発症に関与
- ● ステロイドと飲酒は代表的な危険因子
- ● 外傷による血管損傷でも起こりうる
- ● 原因不明の特発性が多い
この病気を患った著名人
大腿骨頭壊死は専門的な病名である一方、決してまれな病気ではありません。実際に、公表されている範囲でも、この病気を経験した有名人が複数います。こうした事例から、誰にでも起こり得る疾患であることが分かります。
大腿骨頭壊死を公表している主な著名人
| 名前 | 職業 | 公表内容・経過の概要 |
|---|---|---|
| 坂口憲二さん | 俳優 | 特発性大腿骨頭壊死症を公表し、治療のため芸能活動を休止後、復帰 |
| 堀ちえみさん | 歌手・タレント | 大腿骨頭壊死により人工股関節置換術を受け、リハビリ後に活動再開 |
| 千原ジュニアさん | お笑い芸人 | 股関節痛をきっかけに診断され、手術を経験 |
| 美空ひばりさん | 歌手 | 生前に大腿骨頭壊死を患っていたことが知られている |
| 山口達也さん | 元タレント | 大腿骨頭壊死を公表し、飲酒との関連について言及 |
| だいたひかるさん | お笑い芸人 | 特発性大腿骨頭壊死症で人工関節手術を経験 |
- 著名人の事例から分かること
これらの事例に共通しているのは、働き盛りの年代でも発症している点です。また、初期には強い症状がなく、痛みが出てから診断に至るケースも少なくありません。
一方で、適切な診断と治療、リハビリを経て、仕事や日常生活に復帰している例も多く見られます。これは、大腿骨頭壊死が「発症=生活が大きく制限される病気」ではなく、病状に応じた治療選択が重要な疾患であることを示しています。
- 身近な病気として理解することの大切さ
有名人の発信は、この病気が特別な人だけに起こるものではなく、誰にでも起こり得ることを知るきっかけになります。
股関節の痛みや違和感を感じた際に、「年齢のせい」「疲労のせい」と自己判断せず、早めに医療機関へ相談する意識を持つことが、結果として選択肢を広げることにつながります。
※本項目で紹介している著名人の情報は、公表されている報道・発信内容をもとに整理した一般的な情報です。病状や治療経過には個人差があり、同じ大腿骨頭壊死であっても経過や治療方針は異なります。ご自身の症状については、必ず医師の診断を受けてください。
大腿骨頭壊死の検査・治療と対処法
大腿骨頭壊死への対応は、結論として検査で状態を正確に把握し、進行度に応じて治療方針を選ぶことが基本です。
というのも、壊死の範囲や病期によって、適した対処法が大きく異なるためです。
検査では画像診断が中心となり、その結果をもとに保存的治療か手術的治療かが検討されます。
なお治療方針は、病期・壊死範囲・年齢・生活背景などを総合的に考慮して決定されます。
保存的治療と手術療法は、いずれか、または組み合わせて行うことが検討されます。
ただし、保存的治療は、症状の緩和や進行抑制を目的とするもので骨を元に戻す治療ではありません。一方で、進行例では手術が検討されることになります。
| 対処の方向性 | 内容の概要 |
|---|---|
| 保存的治療 | 杖の使用、体重管理、痛み止め、生活指導 |
| 手術的治療 | 骨切り術、人工股関節置換術など |
| 経過観察 | 壊死範囲が小さい場合に定期的検査 |
これら、どの治療にも利点と注意点があります。
例えば、保存的治療は体への負担が少ない反面、進行を完全に止められないことがあります。手術は痛みの改善が期待できますが、年齢や生活状況を踏まえた慎重な判断が求められます。
POINT -
- ● 検査結果に基づき治療方針を選択
- ● 保存的治療は進行抑制が目的
- ● 進行例では手術が検討される
- ● 病期と生活背景の総合判断が大切
早期発見のための重要な検査と診断方法
診断には問診・身体診察に加え、画像検査が用いられます。早期発見の鍵は、MRI検査を含めた適切な画像診断にあります。
大腿骨頭壊死は初期においては症状が乏しく、レントゲン検査だけでは見逃されることがあるからです。
診断は、問診・身体所見に加え、画像検査を組み合わせて行われます。特に、ステロイド使用歴や飲酒歴がある場合は、症状が軽くても注意が必要です。
| 検査方法 | 分かること |
|---|---|
| レントゲン | 骨頭の陥没や変形の有無 |
| MRI | 壊死の有無・範囲・位置 |
| CT | 骨形態の詳細評価 |
MRI検査では、骨頭内の異常を早期に捉えることができ、病期や予後の判断に役立ちます。
日本では、診断に際して公的に整理された基準が用いられており、複数の所見を総合して確定診断が行われます(出典:厚生労働省 特発性大腿骨頭壊死症 診断基準l)。
このように、症状だけに頼らず、適切な検査を受けることが、将来の治療選択を左右します。
POINT -
- ● 初期はレントゲンで異常が出にくい
- ● MRIが早期診断に有効
- ● 問診と画像を総合して判断
- ● 早期発見が治療選択の幅を広げる
MRI検査が早期発見の鍵
MRI検査は、骨内部の変化を詳細に評価できるため、大腿骨頭壊死を早い段階で見つけるために最も有効な検査です。
骨の内部で起きている血流障害や壊死は、レントゲンでは写らない時期が長く続くからです。症状が軽度でも、医師が必要と判断した場合に検討されます。
MRIでは、壊死が始まった骨の性質変化を画像で捉えられます。骨の形が保たれている段階でも異常が分かるため、症状が乏しい時期の診断に向いています。
例えば、「歩き始めに違和感があるが、レントゲンは異常なし」と言われたケースでも、MRIでは壊死の範囲や位置が確認できることがあります。
この検査結果は、将来の進行リスクや治療選択を考えるうえで欠かせません。壊死がどこに、どれくらい広がっているかを把握することで、経過観察でよいのか、早めに対策を取るべきかの判断材料になります。
POINT -
- ● MRIは骨内部の異常を早期に捉えられる
- ● レントゲンで異常がなくても安心できない
- ● 壊死の範囲と位置の評価に役立つ
- ● 将来の治療方針を決める重要な情報源
進行を防ぐために自分でできる生活上の工夫
大腿骨頭壊死では、結論として日常生活で股関節への負担を減らす工夫が進行抑制につながります。
というのも、壊死した骨は体重負荷に弱く、負担が重なるほど骨の陥没が進みやすくなるためです。
まず意識したいのは、股関節にかかる動作の見直しです。床からの立ち座りや長時間の歩行、重い物を持つ動作は、想像以上に大きな負荷になります。
また、体重管理が欠かせません。体重が増えるほど、歩行時に股関節へかかる力は増大します。
そのため、股関節への負担軽減のための体重管理や杖の使用などを進行抑制を目的として指導されることがあります。
理解を助けるため、生活上の工夫を整理します。
| 工夫の内容 | 期待できる効果 |
|---|---|
| 杖の使用 | 歩行時の股関節負担を軽減 |
| 体重管理 | 荷重ストレスの低下 |
| 動作の工夫 | 骨頭への衝撃を抑制 |
| 負担の少ない運動 | 筋力維持と関節安定 |
ただし、過度な安静は筋力低下を招く点に注意が必要です。
医師や理学療法士と相談しながら、無理のない範囲で体を動かす姿勢が大切になります。
POINT -
- ● 股関節への負担軽減が進行抑制につながる
- ● 杖や動作の工夫は有効
- ● 体重管理も重要な対策
- ● 過度な安静には注意が必要
保存的治療の選択肢と限界
保存的治療は、症状の緩和と進行を遅らせることを目的とした対処法です。症状緩和や進行抑制を目的としますが、壊死そのものを回復させる治療ではありません。
壊死した骨そのものを元に戻す治療ではなく、リハビリなどで股関節周囲の筋力をあげて支える力で骨頭へのショックを軽減できるようにすることで骨頭が潰れるまでの時間をできるだけ延ばそうとの考え方です。
主な保存的治療には、痛み止めの使用、杖による免荷、生活指導、運動療法などがあります。壊死の範囲が小さく、骨頭の形が保たれている場合に選択されることが多い方法です。
一方で、壊死範囲が広い場合や、すでに骨の陥没が始まっている場合には、保存的治療だけでは症状の改善が難しいこともあります。
保存的治療の位置づけを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 痛みの軽減・進行抑制 |
| 主な方法 | 免荷、薬物療法、生活指導 |
| 利点 | 体への負担が少ない |
| 限界 | 骨の再生は期待できない |
保存的治療は「治す治療」ではなく、「状況を管理する治療」と理解してください。定期的な画像検査で経過を確認し、経過によっては治療方針の見直しが必要となる場合があります。
POINT -
- ● 保存的治療は進行抑制が目的
- ● 骨を元に戻す治療ではない
- ● 壊死範囲が小さい場合に選択されやすい
- ● 経過観察と判断の見直しが重要
手術が必要になった場合の治療法
それぞれに利点と注意点があるため、十分な説明と理解が重要です。
大腿骨頭壊死は、骨の陥没や関節変形が進んだ場合、手術が治療の中心となります。
保存的治療では壊死した骨の形態を回復させることが難しく、痛みや機能障害が強く残る可能性があるからです。
手術は、骨切り術や人工股関節置換術などがあり、病状や年齢によって適応が検討されます。その選択は、年齢や活動レベル、壊死の範囲によって異なります。比較的若く、壊死が限局している場合には、荷重がかかる位置をずらす骨切り術が検討されることがあります。一方で、骨頭の変形が進行し、日常生活に強い支障が出ている場合には、人工股関節置換術が選択されることが一般的です。
| 手術方法 | 特徴 |
|---|---|
| 骨切り術 | 荷重部を移動し自分の関節を温存 |
| 人工股関節置換術 | 痛みの改善と機能回復が期待できる |
| その他の補助的手術 | 症例により選択 |
手術には、いずれも回復期間や合併症のリスクが伴います。
このため、症状の程度だけでなく、将来の生活設計を含めた総合的な判断が大切になります。
POINT -
- ● 骨の陥没後は手術が検討される
- ● 骨切り術は関節温存が目的
- ● 人工股関節は痛み改善に有効
- ● 年齢や生活背景を踏まえた判断が必要
大腿骨頭壊死と再生医療の位置づけ
大腿骨頭壊死における再生医療は、従来治療を補完する新しい選択肢の一つとして位置づけられています。すべての症例に適応できる治療ではなく、病期や壊死範囲によって適否が分かれるためです。
再生医療は、壊死そのものを直接取り除く治療ではありません。主な目的は、壊死周囲の環境を整え、骨の修復や進行抑制を助ける点にあります。
一方で、骨頭が大きく潰れてしまった段階では、再生医療単独での改善は難しいとされています。
このため、再生医療は「手術を完全に置き換える治療」ではなく、「早期から中期に検討される可能性がある治療」と理解すると整理しやすくなります。
適応の判断には、MRIによる詳細な評価と、専門医による説明が欠かせません。
POINT -
- ● 再生医療は補完的な治療選択肢
- ● すべての病期に適応があるわけではない
- ● 早期〜中期で検討されることが多い
- ● 専門医による適応判断が不可欠
再生医療(幹細胞治療)
再生医療は、進行抑制や弱った組織の修復・再生を目的として実施されている従来の治療以外の新たな選択肢の一つです。
なかでも幹細胞治療は、幹細胞がさまざまな細胞へ分化する能力や、炎症を抑える働きを持つとされ、これらの性質を治療に活用する治療法です。
具体的には、患者さまの脂肪細胞から採取された幹細胞を培養して大きく増やし、股関節内の弱った骨頭周囲に注射で投与し、骨の修復、再生を促す、根本的な治療法といえるものです。入院や翁手術を必要としない未来的な治療法ですが、治療効果には個人差があり、壊死の範囲が広い場合や骨頭の陥没が進んだ症例では、十分な効果が得られない可能性もあります。
自由診療として提供されるため、費用や治療回数については、信頼のできるクリニックで十分に相談することが前提となります。再生医療は国が定めた法律により、再生医療等委員会での厳格な審査と、厚生労働省に再生医療としての提供計画を受理されなければ治療を射することができません。
ご相談される場合は、厚生労働省の届出はもちろん、治療経験や幹細胞治療にあたっては培養される幹細胞の質に留意が必要です。幹細胞治療は、患者s間の幹細胞を培養して、患者さま自身、専用の薬を作るようなイメージですので、培養する技術で効果は大きく変わると言われています。新鮮で効果的な幹細胞の投与が可能なクリニックを選択しましょう。
日本における再生医療は法制度のもとで管理されており、提供にあたっては再生医療等安全性確保法に基づく届出が求められています(出典:厚生労働省「再生医療等安全性確保法の概要」)。
POINT -
- ● 幹細胞治療は弱った部分の修復・再生が目的
- ● 早期〜中期で検討されることが多い
- ● 効果や適応には個人差があり信頼できるクリニクに相談することが大切
- ● 法制度に基づく治療である点も確認が必要
まとめ・大腿骨頭壊死の症状から治療選択まで完全ガイド
大腿骨頭壊死は、股関節の骨に起こる血流障害をきっかけに、静かに進行していく病気です。初期には自覚症状が乏しいことも多く、痛みが出たときにはすでに骨の強度が低下しているケースもあります。そのため、単なる股関節痛として様子を見るのではなく、病気の特徴を正しく知ることが大切です。
この記事では、大腿骨頭壊死とはどのような病気なのかという基礎から、原因や危険因子、症状の現れ方、進行段階の考え方を整理しました。また、MRI検査が早期発見において重要な役割を果たすことや、保存的治療・手術・再生医療といった治療選択肢の位置づけについても解説しています。
大腿骨頭壊死は、壊死の範囲や場所、進行度によって経過や治療方針が大きく異なります。だからこそ、症状の有無だけで判断せず、画像検査を含めた評価を受け、自分の状態を把握することが将来の選択につながります。正しい情報をもとに理解を深め、納得のいく判断を行うための一助として、この記事を役立てていただければ幸いです。
症状の程度や進行速度には個人差があり、早期診断と正確な評価が治療選択の鍵となります。
正しい知識をもとに、医師と相談しながら治療方針をご検討ください。
よくある質問Q&A|大腿骨頭壊死Q1. 大腿骨頭壊死とはどんな病気ですか?がんや骨粗しょう症とは違いますか?大腿骨頭壊死は、血流障害によって股関節の骨が弱くなる病気で、がんや骨粗しょう症とは性質が異なります。 Q2. 大腿骨頭壊死の初期症状にはどんな特徴がありますか?初期症状は、はっきりしない違和感や動き始めの軽い痛みにとどまることが多いです。 Q3. 股関節以外(膝・太もも・お尻)が痛むことはありますか?あります。大腿骨頭壊死の痛みは、太もも前面・膝・お尻に放散することがあります。 Q4. レントゲンで異常がなければ大腿骨頭壊死ではありませんか?レントゲンに異常がなくても、大腿骨頭壊死を否定することはできません。 Q5. 大腿骨頭壊死はどのくらいのスピードで進行しますか?進行速度は人によって大きく異なります。 Q6. 大腿骨頭壊死は両側に起こることもありますか?はい、両側性に発症することも珍しくありません。 Q7. 大腿骨頭壊死になったら必ず手術が必要ですか?必ずしも手術が必要になるわけではありません。 Q8. 保存的治療だけで進行を止めることはできますか?保存的治療は、進行を遅らせる目的で行われますが、完全に止められるとは限りません。 Q9. 大腿骨頭壊死と再生医療(幹細胞治療)はどの段階で検討されますか?再生医療は、早期から中期で骨頭の形が保たれている段階で検討されることが多い治療です。 Q10. 日常生活でやってはいけないことはありますか?股関節に強い負荷がかかる動作は注意が必要です。 Q11. 大腿骨頭壊死は完治する病気ですか?現時点では、壊死した骨を完全に元の状態へ戻す治療は確立されていないのが実情です。そのため、病気と向き合いながら、進行を抑え、生活の質を維持する治療が中心になります。最近では、再生医療の幹細胞治療で軟骨再生の可能性があり、根本的な治療の期待が出てきました。 Q12. どの診療科を受診すればよいですか?基本的には、整形外科を受診してください。違和感や痛みがある場合は、自己判断を避けて早めの受診をお勧めします。 |
リボーンクリニックは、再生医療専門のクリニックです。
国が定めた「再生医療等安全性確保法」のもと、特定認定再生医療等委員会の厳格な審査を経て、厚生労働大臣へ届出を終えた、ご信頼いただける安心の「再生医療専門の医療機関」です。
股関節の治療にあたりましては、法令を遵守し、院長の青木医師をはじめとした経験豊富な医師が患者さまのお悩みに親身に寄り添い、最新鋭の設備と熟練のスタッフといった最高の環境でサポートいたします。
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