変形性股関節症

リボーンクリニック 大阪院の変形性股関節症

臼蓋形成不全 やってはいけないこと|運動・姿勢・治療の注意点

この記事の内容
  1. 臼蓋形成不全 やってはいけないこと|まず知るべき基礎
  2. 臼蓋形成不全 やってはいけないこと|悪化を防ぐ生活と運動
  3. まとめ・臼蓋形成不全 やってはいけないこと|悪化を防ぐ生活と運動の知識
  4. よくある質問Q&A|臼蓋形成不全 やってはいけないこと

臼蓋形成不全 やってはいけないこと|まず知るべき基礎

股関節の違和感や、歩き始めの引っかかるような感覚。
もしかしたら、それは「臼蓋形成不全」が関係しているかもしれません。

臼蓋形成不全は、股関節の受け皿が浅いという構造的な特徴から、日常の何気ない動作でも負担が積み重なりやすい状態です。強い痛みが出ないまま過ごせることも多く、「まだ大丈夫」と思っているうちに、変形性股関節症へ進行してしまうケースも少なくありません。

そこで、臼蓋形成不全でやってはいけないことを正しく知っていただくためにこの記事を作成しました。
この記事では、臼蓋形成不全の基本から、やってはいけない運動や生活習慣、悪化を防ぐための具体的な対策、さらに治療の選択肢までを、初めての方にも分かりやすく整理しています。不安をあおるのではなく、「今、何に気をつければいいのか」が自然と理解できる内容です。

大切な股関節と長く付き合っていくために、まずは正しい知識を身につけてみませんか。
ここから順に読み進めていただくことで、ご自身の状態を見直すヒントが見えてくるはずです。

この記事で分かること

  • ☑ 臼蓋形成不全でやってはいけない運動や生活動作の具体例
  • ☑ 症状を悪化させない座り方・寝方・靴選びのポイント
  • ☑ 放置した場合に起こり得る変形性股関節症のリスク
  • ☑ 保存療法・手術・再生医療を含む治療の考え方

 

臼蓋形成不全やってはいけない運動

 

臼蓋形成不全の読み方と病態

結論からお伝えすると、臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)は股関節の「構造的な特徴」そのものが原因となる病態です。単なる使い過ぎや加齢変化とは異なり、生まれつき、または成長過程で股関節の受け皿が十分に発達しないことが本質です。

股関節は体重を支え、歩く、走る、座るといった生活に欠かせない動きを行う体の中で一番大きく、重要な関節です。股関節は、「臼蓋」と呼ばれる骨盤側のくぼみが、足の付け根、大腿骨頭を広く包み込むことで衝撃や荷重を分散しています。

しかし臼蓋形成不全では、この覆いが浅く、接触面積が小さいため、限られた部分に力が集中しやすくなります。

例えば、同じ体重でも、安定した関節では負荷が全体に分散されるのですが、臼蓋形成不全では点に近い形で圧がかかるため、軟骨や関節唇(臼蓋側のふちの部分)が傷みやすくなります。この状態が長く続くと、軟骨のすり減りが進み、進行すると、より深刻な変形性股関節症へ移行するリスクが高まります。

なお、臼蓋形成不全は特に日本人の女性に多いことが知られています。乳児期の股関節の発育と深く関係しており、国としても早期発見の重要性を示しています。
(出典:厚生労働省「乳児健康診査における股関節脱臼一次健診の手引き」 )

POINT -

  • ● 臼蓋形成不全は股関節の構造そのものの問題
  • ● 臼蓋側、受け皿が浅く荷重が一点に集中しやすい
  • ● 軟骨が傷みやすく将来の変形性股関節症に進行する可能性がある

 

症状とセルフチェックの目安

臼蓋形成不全は、初期の場合、自覚症状が乏しく、気づきにくいこともあり、多少の違和感でも「強く痛まないから大丈夫」と自己判断してしまい、対応が遅れがちになるケースが少なくありません。

特に若い時期は軟骨に厚みがあり、筋力の高く、関節の不安定さが補われていることが多いからです。ただ、体重増加や筋力の低下、活動量の変化や加齢などによって股関節への負担が徐々に表面化してきます。

具体的には、次のような違和感があります。

チェック項目 気づきやすい場面
歩き始めの違和感 椅子から立ち上がった直後
足の付け根の鈍い痛み 長く歩いたあと
股関節の動かしにくさ 靴下を履く、爪を切る動作
左右差のある疲れ 片側だけだるくなる

例えば、階段の上り下りで「片側の股関節だけ引っかかる感じがする」、長時間歩いたあとに「足の付け根が重だるい」と感じる場合は、股関節に無理がかかっているサインと考えられます。

このような違和感も、痛みが軽いからといって放置すると、関節内部では摩耗が進行している可能性があります。もし、違和感が続く場合は、早めに整形外科で画像検査を含めた評価を受けることが大切です。

POINT -

  • ● 初期は痛みが目立たず見逃しやすい
  • ● 立ち上がりや歩き始めの違和感は要注意
  • ● 左右差や動かしにくさも重要なサイン
  • ● 違和感が続く場合は、早めに整形外科を受診すること

 

放置で起こる変形性股関節症へのリスクの段階

臼蓋形成不全を放置すると将来的に「変形性股関節症」へ進行する可能性が高まります。これは脅しではなく、股関節の構造上、避けにくいリスクといえます。

臼蓋形成不全では大腿骨頭を覆う面積が小さく、日々の生活での歩行や立ち座り、スポーツなどを通して、度々同じ部位へ負担が集中し続けることになります。このような状態が長期間続くと、関節軟骨は徐々にすり減り、末期に向かうと骨同士が直接こすれやすくなり、変形性股関節症へと進行してしまいます。

例えば、初期では「違和感」や「軽い痛み」程度だった症状が、進行すると次のように変化します。

進行段階 起こりやすい変化
初期 歩き始めの痛み、疲れやすさ
中期 階段昇降がつらい、可動域制限
末期から変形性股関節症へと進行 安静時痛、歩行困難、生活制限

このように、変形性股関節症への進行は段階的に進み、進行するたびに日常生活の質に大きく影響を及ぼしていきます。特に日本では、変形性股関節症の原因の多くが臼蓋形成不全に関連しているとされており、早期対応の意義は非常に大きいといえるのです。

POINT -

  • ● 放置すると変形性股関節症へ進行しやすい
  • ● 軟骨摩耗は徐々に進むため気づきにくい
  • ● 進行すると生活動作に大きな制限が出る

 

レントゲン以外、MRI検査の重要性

違和感が続く段階で、整形外科を受診した場合、レントゲンに加えて、軟骨の状態をより精密に診断ができるMRI検査という画像検査を求められます。現在の股関節の状況について、どのステージなのかの判断材料に用います。その確認を経て治療方針が示されることになるはずです。

理由として、レントゲン検査では骨の形は確認できても、軟骨や関節唇、炎症の状態までは十分に評価できない場合があるからです。臼蓋形成不全では、骨の変形が目立たない段階でも内部の損傷が進んでいるケースもあるからです。

ここで役立つのがMRI検査です。MRIでは、次のような情報を詳細に把握できます。

MRIで確認できる内容 意味すること
軟骨の状態 すり減りの程度
関節唇の損傷 不安定性の有無
骨内の変化 早期炎症や浮腫

例えば、「レントゲンでは異常なし」と言われたものの、MRIで関節唇損傷が見つかるケースも少なくありません。こうした画像情報は、保存療法で経過を見るか、以降の治療方針を判断する重要な材料になります。

なお、画像検査の活用は整形外科診療の基本として位置づけられています。
(出典:日本整形外科学会「変形性股関節症 診療ガイドライン」)

POINT -

  • ● 痛みの強さだけで受診を判断しない
  • ● MRIは初期変化の把握に有効
  • ● 治療方針決定の精度が高まる

 

治療の選択肢(保存療法・手術・股関節の再生医療)

臼蓋形成不全の治療は症状の程度や生活背景に応じて段階的に選択されます。必ずしも最初から手術が必要になるわけではありません。

まず、症状が軽い段階では保存療法が中心です。体重管理や運動療法による股関節を支える筋力の増強。また、生活動作の見直し(しゃがまない、重いものを持たない、体重低減に取り組む)によって、股関節への負担を減らします。一方、痛みが強くなり、関節の変形が進行している場合は手術療法が検討されます。

それぞれの治療の特徴を整理すると、次の通りです。

治療法 主な目的 注意点
保存療法 進行予防・痛み軽減 継続的な管理が必要
手術療法 構造改善・痛みの根本改善 身体への負担と回復期間
股関節の再生医療 痛み軽減・機能改善 適応や効果に個人差

最近注目されている股関節の再生医療は、手術と保存療法の中間的な選択肢として位置づけられ、手術と比して注射だけで治療するという低侵襲な治療法である点が特徴です。ただし、すべての症例に適しているわけではなく、関節の状態や進行度を正確に評価したうえで判断する必要があります。

いずれにしても、自己判断で治療法を決めるのではなく、画像検査や専門医の所見を踏まえて選択することが大切です。

POINT -

  • ● 治療は段階的に選択される
  • ● 軽症では保存療法が基本
  • ● 再生医療は中間的な選択肢として検討される

 

臼蓋形成不全 やってはいけないこと|悪化を防ぐ生活と運動

臼蓋形成不全は、日常生活の注意をしっかり守ることが、その後の経過を大きく左右します。普段の動作や習慣を見直すだけでも股関節への負担を確実に減らすことができるからです。

なぜ日常生活が重要かというと、臼蓋形成不全は股関節の構造的な問題であり、毎日の立つ・歩く・座るといった動作や運動が積み重なって影響するからです。また、深くしゃがむ、正座やあぐら、急なひねり動作、衝撃の強い運動などは、知らないうちに関節内部の摩耗を進めてしまう要因になります。

ここでは、臼蓋形成不全 やってはいけないことを「生活」と「運き」の視点から「臼蓋形成不全でやってはいけないこと」を整理し、悪化を防ぐために意識したい具体的なポイントを解説していきます。

無理に我慢するのではなく、できることから整えていくことで、自然な股関節と長く付き合うための土台が見えてくるはずです。

 

臼蓋形成不全 やってはいけない運動

臼蓋形成不全では股関節に強い衝撃や、ねじれが加わる運動は避けるべきです。運動不足は身体によくありませんが、運動の種類を誤ると、症状の悪化を早めてしまうので注意が必要です。

なぜなら、臼蓋形成不全の股関節は、構造的に安定性が低く、限られた部分に負荷が集中しやすいためです。特に、着地の衝撃や、急な方向転換を伴う動きでは、軟骨や関節唇に繰り返し圧力やストレスがかかります。

例えば、次のような運動は注意が必要です。

スポーツ種目 なぜ避けた方がよいのか(股関節への影響)
ランニング・ジョギング 着地のたびに体重の数倍の衝撃が股関節に集中し、臼蓋のかぶりが浅い関節では軟骨の一点摩耗が起こりやすいため
バスケットボール・バレーボール ジャンプと着地を繰り返すことで、瞬間的な強い圧縮力が股関節に加わり、炎症や痛みを誘発しやすい
サッカー キック動作・ダッシュ・急停止が連続し、股関節の回旋と衝撃が同時に起こるため、関節唇への負担が大きい
テニス・バドミントン 切り返し動作や踏み込みで、体重を乗せたまま股関節をひねる場面が多く、不安定な関節では損傷リスクが高まる
格闘技・ラグビー 接触による外力や予測できない方向への荷重が加わり、股関節の安定性を保ちにくい
ウェイトトレーニング(高重量) スクワットなど深い屈曲+高負荷により、臼蓋縁へ強い圧が集中しやすい

一方で、すべての運動が禁止、やってはいけない、とされるわけではありません。水中ウォーキングや自転車こぎのように、股関節への衝撃が少ない運動は、筋力維持や体重管理に役立ちます。

痛みが出ない範囲で、関節に優しい動きを選ぶ視点で取り組みましょう。

POINT -

  • ● 衝撃やひねりの強い運動は避ける
  • ● 運動の「種類選び」が悪化防止の鍵
  • ● 低負荷で継続できる運動を選ぶ

 

逆にやってよいスポーツ一覧|臼蓋形成不全でも続けやすい運動

臼蓋形成不全があっても股関節への衝撃とねじれが少ないスポーツであれば、状態に応じて継続できる可能性があります。
ポイントは「負荷が直線的」「動作が予測可能」「中断しやすい」ことです。

臼蓋形成不全でも比較的取り入れやすいスポーツ

スポーツ 続けやすい理由 注意点
水中ウォーキング 浮力により体重負荷が大幅に軽減 水中でも無理な歩幅は避ける
水泳(クロール・背泳ぎ) 衝撃がなく関節に優しい 平泳ぎのキックは注意
自転車(固定式含む) 着地衝撃がなく回旋が少ない サドルが低すぎないよう調整
エアロバイク 負荷調整が容易で安全性が高い 痛みが出る強度は避ける
ウォーキング(短時間) 日常動作に近く管理しやすい 速歩・長距離は控える

重要なのは「できるか・できないか」ではなく、どの条件なら可能かという視点で、股関節に無理なく取り組めることが大切です。

POINT -

  • ● 臼蓋形成不全でも「できる運動」と「避ける運動」は明確に分けられる
  • ● 競技継続は「中止」ではなく「置き換え」が現実的
  • ● 学生・社会人アスリートは将来の股関節寿命を意識することが重要

 

深くしゃがむ・床生活がNGな理由

深くしゃがむ動作や床に直接座る生活は股関節に過度な圧力とねじれを生じさせやすいため、臼蓋形成不全では控える必要があります。

理由として、しゃがみ込み動作では股関節が深く曲がり、大腿骨頭が臼蓋の縁に強く押し付けられる状態になるからです。臼蓋のかぶりが浅い場合、この圧力が一部に集中しかねず、軟骨や関節唇を傷めやすくなります。

生活上で起こりうる具体的な例では、和式トイレや床の物を拾う動作、正座やあぐらといった姿勢が分かりやすいと思います。つまり、床生活では立ち座りの回数も増え、そのたびに股関節へ大きな負荷がかかてしまうのです。和式の畳と座布団生活から、様式のテーブルと椅子の生活へと変えるような意識です。

生活動作 股関節への影響
深いしゃがみ込み 前方への強い圧迫
正座・あぐら ひねりと圧縮の同時負荷
床からの立ち上がり 体重の数倍の力が集中

椅子やベッドを使う「洋式生活」への切り替えは、日常的な負担軽減に直結します。床で作業が必要な場合も、台や補助具を使って股関節を深く曲げない工夫が大切になります。

POINT -

  • ● 深い屈曲姿勢は関節に強い負担
  • ● 和式の床生活は立ち座り動作が増えやすい
  • ● 椅子中心の洋風の生活が悪化防止につながる

 

正座・あぐら・座り方の注意点

正座やあぐら、誤った座り方は股関節に持続的な圧迫とねじれを生じさせ、症状悪化の要因になります。日常の姿勢は癖になっていて無意識に繰り返されるため、影響が蓄積しやすい点に注意が必要です。

なぜ問題になるかというと、正座やあぐらでは股関節が深く曲がり、かつ内外にひねられた状態が続くからです。臼蓋のかぶりが浅い場合、関節の縁に負荷が集中し、軟骨や関節唇へのストレスが増えます。

例えば、床に長時間座る習慣があると、立ち上がる際に強い負荷がかかるだけでなく、骨盤が後傾しやすくなります。結果として、歩行時のバランスも崩れ、股関節に余計な負担がかかってしまうのです。

座り方 股関節への影響
正座 深い屈曲と前方圧迫
あぐら ねじれと左右差
椅子でも浅く腰掛ける 骨盤後傾で負担増

椅子に座る場合は、骨盤を立て、股関節を深く曲げすぎない高さを選ぶことが大切です。背もたれを活用し、足裏が床につく姿勢を意識すると、負担を抑えやすくなります。

POINT -

  • ● 正座・あぐらは圧迫とねじれが重なる
  • ● 床座りは立ち上がり動作の負担が大きい
  • ● 椅子では骨盤を立てた姿勢を意識

 

ひねり動作と急な方向転換の危険

ひねり動作や急な方向転換は関節内部に剪断力が加わり、痛みや炎症を引き起こしやすい動きです。

その理由は、臼蓋形成不全では関節の安定性が低く、回旋動作に対する耐性が弱いためです。特に、体重を乗せた状態でのひねりは、関節唇を傷つける原因になります。

例えば、振り返りざまに方向を変える、ゴルフやテニスで体をひねる、急に向きを変えて歩くといった動作が該当します。これらは一見何気ない動きですが、瞬間的に強い力が加わります。

動作 起こりやすいリスク
急な方向転換 関節唇への剪断
体をひねる動作 不安定性の増大
片脚に体重をかけた回旋 炎症の誘発

歩行時は小さな歩幅で進み、方向転換は体ごと向きを変える意識が有効です。スポーツを行う場合も、無理な回旋を伴わない種目を選ぶことが望ましいでしょう。

POINT -

  • ● ひねりは関節内部に剪断力を生む
  • ● 急な方向転換は痛みの引き金になりやすい
  • ● 体ごと向きを変える動作が基本

 

※剪断力とは

上下や前後に押し合う力ではなく、横にずらそうとする力が剪断力です。股関節の場合、大腿骨頭(太ももの骨)が臼蓋(骨盤の受け皿)に対して横方向にずれようとする力=剪断力が生じます。剪断力が一点に集中し、関節唇や軟骨が傷みやすくなります。

 

重い荷物と片側荷重を避ける

重い荷物や、荷重が片側だけに重さが偏る持ち方は股関節への負担を大きく増やします。日常での荷物などの持ち運び方を見直すだけでも、悪化防止につながります。

片側荷重では骨盤が傾き、左右の股関節に不均等な力がかかります。臼蓋形成不全では、もともと接触面が狭いため、この偏りが症状を悪化させやすくなります。

具体的には、片側(手や肩にかけて)で重いバッグを持つ、買い物袋などの荷物をいつも同じ側で持つといった癖、習慣が挙げられます。これを続けると、痛みのある側をかばい、さらに姿勢が崩れる悪循環に陥ります。

どうするか?

工夫 期待できる効果
リュックを使う 荷重を左右均等に
荷物を小分けにする 瞬間負荷の軽減
カートを利用 持ち上げ動作を回避

重い物を持つ必要がある場合は、体に近づけて両手で持ち、急に持ち上げないことも大切です。日常の小さな工夫が、股関節の負担軽減につながります。

POINT -

  • ● 片側荷重は骨盤の傾きを招く
  • ● 荷物は左右均等に分散する
  • ● カートやリュックの活用が有効

 

ハイヒールの可否と靴選びのポイント

臼蓋形成不全がある場合、ハイヒールの常用はおすすめできません。足元の不安定さが股関節の負担を増やし、痛みや炎症を招きやすくなります。

理由は、ハイヒールを履くと重心が前方へ移動し、骨盤が前傾しやすくなるためです。すると股関節の前側に圧が集中し、臼蓋の縁に負担がかかります。かぶりが浅い関節では、この負荷がそのまま痛みにつながりやすくなります。

例えば、ヒールの高い靴を履いて長時間歩いたあとに、足の付け根が重く感じたり、左右どちらかだけが疲れやすいと感じる場合は、靴が影響している可能性があります。

靴の種類 股関節への影響
ハイヒール 重心前方化・前側圧迫
クッションの少ない靴 衝撃吸収が弱い
かかとが安定した靴 負担が分散しやすい

靴選びでは、ヒールが低く、かかとをしっかり支える形状で、クッション性のあるものが適しています。インソールを使って左右差を調整することも、負担軽減に役立ちます。詳しくは、整形外科などでもアドバイスしてもらえます。

POINT -

  • ● ハイヒールは股関節前方の負担を増やす
  • ● クッション性と安定性を重視する
  • ● インソールでバランス調整も有効

 

体重増加が股関節に与える影響

結論から言うと、体重増加は臼蓋形成不全の進行リスクを高める大きな要因になります。体重が増えると股関節にかかる負荷は体重そのものの増加以上の影響を関節に与えることになります

歩行や立ち上がりといった日常動作では、股関節に体重の数倍の力がかかり、臼蓋形成不全では接触面が狭いため、増えた体重が一点に集中しやすくなります。実のところ、歩く動作だけでも、実際には体重以上の力が関節に加わり、一般的には体重の数倍に相当するとされています。

仮に体重が70kgの場合、歩行のたびに股関節には200kgを超える荷重がかかる計算になります。体重が1kg増えると、歩行時には3~4kg分の追加負荷として股関節に伝わると考えられ、このような状態が続くと、軟骨の摩耗が進み、痛みや可動域制限が出やすくなることをご理解いただけるはずです。

体重変化 股関節への影響
体重増加 圧迫力の増大
適正体重維持 負担の分散
ゆるやかな減量 痛み軽減に寄与

体重を減らすことは非常に有効ですが・・・極端な食事制限は筋力の低下を招くため注意が必要です。関節に優しい運動とバランスの取れた食事を組み合わせ、無理のない体重管理を心がけましょう。

POINT -

  • ● 体重増加は負担を直接増やす
  • ● 適正体重の維持が進行予防につながる
  • ● 急激な減量は避ける

 

臼蓋形成不全 ストレッチの注意点

臼蓋形成不全では「柔らかくし過ぎない」「伸ばしすぎない」「痛みを出さない」ストレッチが基本です。良かれと思って行うストレッチが、かえって関節への負担を増やす場合があります。

臼蓋形成不全の股関節は、もともと安定性が低い構造で可動域を無理に広げるストレッチや、反動をつけての動きは、関節唇や軟骨に余計なストレスを与えやすくなります。

例えば、開脚を深く行うストレッチや、痛みを我慢して股関節を強くひねる動作は要注意です。筋肉は伸びているように感じても、関節内部では負荷が集中していることがあります。

ストレッチのタイプ 注意点
強い開脚 関節縁への圧迫
反動をつける動き 不安定性が増す
痛みを我慢する 炎症悪化の原因

ストレッチを行う場合は、呼吸を止めず、心地よい伸び感にとどめることが大切です。痛みが出ない範囲で、股関節周囲の筋肉を「ゆるめる」意識を持つと、安全性が高まります。

POINT -

  • ● 無理に可動域を広げない
  • ● 反動や痛みを伴う動きは避ける
  • ● 心地よさを基準に行う

 

臼蓋形成不全 寝方と痛みの軽減策

臼蓋形成不全では寝方を工夫するだけで夜間痛や起床時の違和感が軽減することがあります。睡眠中の姿勢は、想像以上に股関節へ影響を与えることをご存知でしょうか。

長時間同じ姿勢が続くこと股関節に偏った圧がかかりやすくなるためで、特に横向き寝では、上側・下側いずれかの股関節に負担が集中しやすくなってしまいます。

具体的には、次のような工夫が役立ちます。

寝方の工夫 期待できる効果
横向きで膝にクッション 股関節のねじれ軽減
仰向けで膝下にタオル 前側の緊張緩和
柔らかすぎない寝具 姿勢の安定

例えば、横向きで寝る場合は、両膝の間にクッションや抱き枕を挟むことで、骨盤のねじれを防ぎやすくなります。また、仰向けでは膝の下に丸めたタオルを入れると、股関節の前側が楽になることがあります。

朝起きたときに痛みやこわばりが強い場合は、寝姿勢や寝具が合っていないサインかもしれません。その場合は、ここに記したような小さな調整を重ねることで、日常の痛み軽減につなげてください。

POINT -

  • ● 寝姿勢は長時間の負担になりやすい
  • ● クッションでねじれを防ぐ
  • ● 起床時の違和感は見直しのサイン

 

まとめ・臼蓋形成不全 やってはいけないこと|悪化を防ぐ生活と運動の知識

臼蓋形成不全は、股関節の受け皿が浅いという構造的な特徴から、日常生活の中での負担が少しずつ積み重なりやすい状態です。そのため、臼蓋形成不全 やってはいけないことを知らずに過ごしていると、気づかないうちに軟骨の摩耗が進み、将来的に変形性股関節症へ移行するリスクが高まります。

ただ、必要以上に不安になる必要はありません。

やってはいけない運動や動作を理解し、深くしゃがむ・正座やあぐら・急なひねり動作・重い荷物の片側持ちといった負担の大きい習慣を見直すなど、意識することで股関節へのストレスは確実に減らせます。あわせて、体重管理や靴選び、寝方の工夫など、日常の小さな対策も大切なポイントです。

また、痛みが軽いうちでも違和感が続く場合は、早めに整形外科を受診し、必要に応じてMRI検査を受けることで、関節内部の状態を正確に把握できます。保存療法を基本としながら、症状や進行度によっては手術や、近年は、股関節の再生医療といった選択肢を検討することも可能です。

臼蓋形成不全は、「正しく知り、無理をしない」ことが将来の股関節を守る近道です。この記事をきっかけに、ご自身の生活や運動習慣を一度見直し、長く自分の足で歩き続けるための第一歩につなげていただければと思います。

 

監修:医療法人香華会リボーンクリニック大阪院

 

股関節 痛み

 

よくある質問Q&A|臼蓋形成不全 やってはいけないこと

Q1.臼蓋形成不全があっても、まったく運動しない方がいいですか?

A.いいえ、運動を完全にやめる必要はありません。
臼蓋形成不全でやってはいけないことは「すべて動かすこと」ではなく、股関節に強い衝撃やひねりが加わる運動です。ランニングやジャンプなどは避ける必要がありますが、水中ウォーキングや自転車など、負担の少ない運動は筋力維持や体重管理に役立ちます。大切なのは、痛みが出ない範囲で継続できる運動を選ぶことです。

Q2.痛みがほとんどなくても、気をつけた方がいいのでしょうか?

A.はい、痛みが軽くても注意が必要です。
臼蓋形成不全は初期に自覚症状が出にくく、違和感程度のまま進行することがあります。痛みが少ないからといって、深くしゃがむ動作や正座・あぐらなどを続けると、関節内部では軟骨の摩耗が進んでいる可能性があります。違和感が続く場合は、早めの生活見直しと受診が勧められます。

Q3.正座やあぐらは、短時間でも避けた方がいいですか?

A.基本的には避けた方が安心です。
短時間であっても、正座やあぐらは股関節を深く曲げ、ねじれを伴う姿勢です。臼蓋形成不全では関節への圧が集中しやすいため、回数が重なるほど負担が蓄積します。床に座る場合はクッションや椅子を使い、股関節を深く曲げない工夫が大切です。

Q4.ハイヒールは絶対に履いてはいけませんか?

A.絶対禁止ではありませんが、常用はおすすめできません。
ハイヒールは重心が前に移動し、股関節の前側に負担が集中しやすくなります。どうしても履く必要がある場合は、時間を短くする、移動距離を減らすなどの配慮が必要です。普段履きは、クッション性と安定性のある靴を選ぶことが、臼蓋形成不全でやってはいけないことになるため、避けた方が無難です。

Q5.体重管理はどの程度意識すべきですか?

A.無理のない範囲で、適正体重の維持を意識してください。
股関節には歩行時に体重の数倍の力がかかります。臼蓋形成不全では接触面が狭いため、体重増加の影響を受けやすい状態です。ただし、急激な減量は筋力低下を招くため逆効果になることもあります。運動と食事を組み合わせた、緩やかな体重管理が理想です。

Q6.どのタイミングで病院を受診すればよいですか?

A.違和感が続く時点での受診が目安です。
強い痛みがなくても、歩き始めの引っかかり感や左右差のある疲れが続く場合は、一度整形外科で相談する価値があります。必要に応じてMRI検査を行うことで、軟骨や関節唇の状態まで確認でき、今後の対策や治療方針を立てやすくなります。

Q7.将来的に必ず手術が必要になりますか?

A.必ずしも手術が必要になるわけではありません。
多くの場合、初期から中等度では保存療法が基本となります。生活習慣の見直しや運動療法で進行を抑えられるケースも少なくありません。状態によっては手術や股関節の再生医療が選択肢になることもありますが、進行度や生活背景を踏まえて判断されます。

 

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