コラム
リボーンクリニック 大阪院のコラム
幹細胞の種類を徹底解説｜ES細胞・iPS細胞・成体幹細胞！それぞれの違いと特徴
幹細胞の種類と特徴を解説｜ES細胞・iPS細胞・成体幹細胞の違いとは？
「幹細胞」と一口に言っても、いくつかの種類があって、それぞれに特徴があり、異なる性格を持っています。「ES細胞」や、「iPS細胞」などは話題になることが多く、その名称を耳にされたことがあるかもしれません。ただし、聞いたことはあるけど、それら何がどう違うか、どのように活用されているのかを理解している方は多くないはずです。
当院が行う幹細胞治療のために、カウンセリングにお越しになられる感謝さまも、有名なiPS細胞との区別がつかない方が多いのですが分からなくて当然です。iPS細胞は、京都大学の山中教授が2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞した今後、大きな可能性を秘めた細胞です。関西万博でもミニ心臓が展示されたりしています。ただ、再生医療として実用化するには、もう少し時間が必要です。
そこで、この記事では、幹細胞の3大分類である「ES細胞（胚性幹細胞）」「iPS細胞（人工多能性幹細胞）」「成体幹細胞（体内に存在する幹細胞）」について、それぞれの特徴、可能性、現在の立ち位置、医療での可能性や、使われ方をわかりやすく解説してまいります。
まずは幹細胞の基本
幹細胞とは、誰の身体にもの存在し、「自己複製」と「分化」の2つの能力を持った細胞です。簡単に言えば、細胞を増やしながら、必要に応じてさまざまな細胞（神経、皮膚、血液など）に変身できるスーパーで特殊な細胞です。たとえば皮膚や筋肉、血液や骨といった体内にある様々な組織に存在していて、損傷した細胞を修復したり、損傷した細胞に入れ替わったりして、身体を健康な状態に維持してくれています。
|
「再生医療」は、幹細胞が持つ、この性質を活かすことで、失われた組織や細胞の機能を回復させて治療を行います。この幹細胞の特長を活かして、従来の治療法では対応が難しい病態に対しても、根本的な改善が期待できるため、医療として大きな期待が寄せられています。
ES細胞（胚性幹細胞）
特徴
ES細胞は、胚（受精卵の初期段階）の内部細胞塊（内細胞塊）から得られる幹細胞です。あらゆる細胞のタイプに分化する能力（多能性）を持っています。そのため、胚自体を形成する細胞タイプ以外にも、様々な組織や器官の細胞に分化できる能力があります。現状は研究段階です。
- ・受精卵から作られる幹細胞
- ・すべての細胞に分化できる（多能性）
- ・非常に強い再生能力を持つ
メリット
- ・理論上、どんな組織にもなれる万能性
- ・研究用として再生医療の基盤となってきた
課題・注意点
- ・倫理的問題（人の受精卵を使うことに対する反対意見）
- ・臨床利用が限られている（一般的に体外受精で生じる余剰な胚を用いる）
- ・腫瘍化・がん化のリスク
現在の活用
- ・主に研究段階での使用にとどまる
- ・臓器再生の基礎研究に活用
iPS細胞（人工多能性幹細胞）
特徴
体細胞を人工的に多能性に誘導する人工的な細胞です。ES細胞と同様に、あらゆる細胞タイプに分化する能力を持っています。患者自身の細胞から作製できるため、移植時の拒絶反応のリスクが低く、倫理的な問題も少ない利点があります。再生医療や創薬研究に期待されています。現状は研究段階です。2012年に京都大学の山中教授がノーベル医学・生理学賞を受賞したことでも有名。
- ・患者の皮膚や血液の細胞から作られる
- ・遺伝子を導入して初期化、「多能性」を人工的に再現
- ・将来的には、様々な病気の治療への貢献に期待
メリット
- ・自分の細胞から作れるため拒絶反応が起きにくい
- ・倫理的問題が少ない（受精卵を使わない）
- ・医療や創薬研究にも使いやすい
課題・注意点
- ・遺伝子操作による「がん化」リスクの懸念
- ・安全性確保のための厳しい管理が必要
現在の活用
- ・網膜疾患やパーキンソン病などの治療研究が進行中
- ・再生医療だけでなく、創薬テストや毒性試験にも使われる
成体幹細胞：体性幹細胞（MSC（間葉系幹細胞））
特徴
体内に存在する組織や器官に存在し、その組織や器官の細胞を再生する役割を担っています。体性幹細胞とも呼ばれ、ES細胞やiPS細胞と異なります。また、体性幹細胞は一種類ではなく、多くの種類があり、以下はその一例です。
| 幹細胞の種類（一例） | 再生、補充、修復 |
| 間葉系幹細胞 | 軟骨、腱、骨芽、筋肉、心筋、肝 |
| 造血幹細胞 | 赤血球、白血球、血小板 |
| 上皮幹細胞 | 皮膚、粘膜上皮 |
| 血管内皮幹細胞 | 血管内皮細胞 |
中でも、「間葉系幹細胞（MSC）」は、骨髄や脂肪組織から採取でき、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、筋肉細胞など、間葉系の様々な細胞に分化できます。近年では、神経細胞や肝細胞にも分化できることが報告され、現在、実際に受けることができる再生医療として間葉系幹細胞は大きく注目されています。
- ・誰の身体にも存在する幹細胞
- ・骨髄、脂肪、歯髄、臍帯などから採取可能
- ・間葉系幹細胞は分化能力が高く、安全性が高い
メリット
- ・際の治療現場ですでに多く使われている
- ・自分の体から採取できるため、アレルギーや拒絶反応等のリスクが少ない
MSCは、様々な組織に存在し、間葉系の細胞に分化できる能力を持つとともに、組織修復、免疫調整、抗炎症作用など、様々な機能を持ちます。これらの機能が、再生医療や細胞治療における重要な役割を担っていると考えられています.
課題・注意点
- ・間葉系幹細胞の培養には、CPCといわれる培養するための特別な施設の確保、経験と知見が必要
- ・コストが掛かるため、費用的に高額になりがち
- ・培養技術（経験と知見）によって幹細胞の質に大きな差が生まれる
- ・培養思想（冷凍、薬剤）によって幹細胞の質に大きな差が生まれる
現在の活用
- ・関節の再生（膝・肩など）
- ・美容医療（肌の若返り、育毛）
- ・糖尿病・肝疾患・脳卒中後の後遺症などへの応用
成体幹細胞：間葉系幹細胞
比較表：3つの幹細胞の違いまとめ
| 種類 | 作られ方 | 分化能力 | 主な用途・段階 | 倫理的課題 | |
|---|---|---|---|---|---|
| ES細胞 | 受精卵由来 | 高い | 研究・基礎実験中心 | あり | |
| iPS細胞 | 成人細胞から人工的に作製 | 高い | 臨床研究、創薬など | 少ない | |
| 成体幹細胞 | 間葉系幹細胞 | 骨髄・脂肪などから採取 | 高い | 実際に治療で使用 | なし |
今後の展望と可能性
関西万博で展示されているiPS細胞から作られた心臓など、再生医療の登場によって、医療は大きな転換点を迎えようとしています。今後の研究が進めば、今後ますます多くの疾患に対する治療法が登場するでしょう。
成体幹細胞の応用も日々進歩しており、間葉系幹細胞は、臨床現場で多くの症例実績が生まれています。「これまで治療が難しかった疾患」や、高齢化社会の「手術ができない人にも使える治療法」としての期待が高まっています。
今後は「幹細胞の使い分け」や「組み合わせ」による新しい治療戦略も注目されており、単一の細胞だけでなく複数の幹細胞を使った個別最適な医療が進化していくと考えられます。
まとめ・幹細胞の種類を徹底解説｜ES細胞・iPS細胞・成体幹細胞！それぞれの違いと特徴
幹細胞治療は、病気の種類、患者の状態、治療の目的によって応用範囲が多いのが特徴ですが、一番の注意点は、投与する幹細胞の質です。幹細胞は生物です。生きた細胞です。その保存方法や、培養経験、培養知見、培養方針などによって、幹細胞を力は大きく変わってしまいます。
幹細胞治療で大切なのは「新鮮で健康、元気な幹細胞」の投与ができることです。投与されるクリニック等にてしっかりご説明を受けられることをお勧めいたします。
再生医療は、名前は同じでも内容は大きく違います。料理に例えるとレシピのようなイメージです、同じ料理でも、着色料や合成調味料や、冷凍食材などで価格や味が大きく変わってしまうのと同じです。培養方法は効果に大きな違いをもたらすため、それぞれの特徴を知ること。それが「正しい再生医療の選択」に繋がります。
当院も独自に最適化したコダワリの培養方法で幹細胞をご提供しておりますで、検討の際は、お問合せください。
監修：医療法人香華会 リボーンクリニック大阪院
次回予告
幹細胞治療ってどんなふうに行われるの？治療前〜治療後までの流れをステップに分けてご紹介していきます。
